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Posted by のらんば長崎運営事務局 at

2011年05月09日

極寒野営

この日記は2011年01月04日mixiに掲載したものです。

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(前篇)
1月2日午後2時半、サイトに到着。谷あいのこの場所は既に陽が落ちていて、いやぁ~、寒い寒い。風も強くて耳が痛い。まずはテント設営。今回は地面からの冷気の伝播が出来るだけ抑制できて、風が直接当たり難くて、且つ寝心地がよさそうな場所(平坦な枯れ草の上)を設営場所に選んだ。それが終わると焚き火の場所を決め、それに合わせてテーブル、椅子、その他の道具類の設置。その後、焚き火の薪を集め、それらを適度な長さに折り、太さ違いに種分け。大勢での野営だとこんなことはしなくても手が沢山あるので大丈夫なのだけれど、ひとりだとそうは行かない。ある程度種分けしておき、効率よく薪をくべて行かないと、のんびりしている時間などなくなる。皆さん、野営と云うと、のんびり星空を眺めたり、焚き火を見つめたり、美味しいお酒を愉しんだり、そんなことを想像するかも知れないが、意外と忙しいのだ。事実、今回本は全く読めなかった。



一通りの準備が終わったのが午後4時半。ここで初めて椅子に座る。焚き火にはまだ少し早いので、30年愛用しているガスカートリッジのストーブにシェラカップを直に置いてお湯を沸かす。一旦お湯を別のシェラカップに移しそこにラムをやや多めに注ぐ。ホット・ラムだ。ずっと体を動かしていても流石にこの時期の夕暮れは寒い。ホット・ラムで温まろうというのである。ちなみに、シェラカップを別のものに移しかえるのは、お湯を沸かしたものだと、熱くて唇がカップに貼り付いてしまうから。シェラカップは飲み口が熱くならないというアレは嘘である。確かに熱くなり難い構造になってはいるが、直火ではどうにもならないのである。これも経験からなせる技(それほどのことでもないか)。

何せ気温が低いので、ホット・ラムもあっと云う間にコールド・ドリンクになってしまう。ホットなうちの飲まないとホット・ラムにはならないから、慌てて飲まないとならないのだ。それでいーのだ。これが野営なのだ。洒落たバーで過ごしているのではないのである。背後に獣の気配を感じながら過ごすのである。

午後5時を回り、当りも暗くなってきた。ヘッドライトを点け焚き火の準備。種火に火をつけようと先ほどストーブに着火したライターの石をシュバツ、シュバッ、シュバッ・・・ 「ゲッ、困った・・・。火がつかない・・・(汗)」、ガスの残量が少ないのだ。ライターを手で包み体温で暫く温め再度シュバッ・・・。弱々しいながらも何とかついた・・・。ライターを使うのはほんの一瞬で、後はその種火から焚き火を起こす。自称「焚き火の達人Chama♪」「炎のこころを知る男Chama♪」としては、そこからはわけなく焚き火を起こしたが、ほどなく辺りは暗闇に呑みこまれて行った。



「さぁて、じゃ夕飯にしようか」などと大きな独り言を云いつつ、まずはステーキから調理だ。ガーリックパウダーと塩コショウを大量に振りかけて焚き火で焼く。ポイントは焼き具合いなのだが、ここのところ野営ではステーキばっかやっているので、肉をつんつんとつつくとその反力の度合いで焼き加減が判るようになってきた。最後の見極めは肉汁がジュージューと出始めたころがちょいレアでイーカンジなのだ。焼いたステーキはまな板に載せ、その場でナイフで切って、ナイフで肉を突き刺し口に運ぶ。これまた、早く食べないとあっという間に肉が冷たくなる。だから、必然的に早食い大会のようになる。ひとり早食い大会なのだ。しかし、これがまた、美味いのよ。暗闇の中「ウメェーッ!」っと大声で叫びながら肉に食らいつき、ビールをウガッ、ウガッ、ウガッと飲み干す姿は、熊が見たら恐れおののくのではないかと思うくらいだ。

次の料理は、ヤゲン軟骨炒め。これも最近腕を上げたメニューなのだがポイントは、多めの油で強火で炒めることと(と云っても焚き火だから弱火には出来ないのだが)、ネギを大量に投入することと、ガーリックと塩コショウも大量に投入することに尽きる。つまり、大量と大量と強火のアンサンブル、まさに野生の男の料理なのだ。でも、ほんっと美味しいよ。皆さんにも食べさせてあげたいねぇ・・・。



そんなこんなで食べ物との戦いを終えふと夜空を見上げると、満点の星空がそこにあった。ここまでは時間が怒涛の勢いで流れていくのだが、これから先の時間は一気に緩やかな流れに変わるのである。

実は今回野営するのに際し、いくつか拘った準備をしていたのであるが、それは寒さ対策であった。ソックスは1足2,000円以上するウールのものを購入。最初の1足を購入した際には、野営用として割り切り、「高いけど、ま、いっか」と思い購入したのだけれど、一旦履いてみるとその心地よさは想像を遥かに上回るものであり普段履きにも欲しくなり、野営する前にさらに2足も買い足してしまったのである。しかも今日もまた、4足目を探し求めてアウトドアショップを放浪していたりなんかして・・・。次に、拘りのふたつめは、アンダーウエア。タイツは既に持ってるので、今回は上に着るアンダーウェア。これには、モンベルのジップアップT(6,000円くらい)を購入。さらに、その上着として、これまたモンベルのライトインナーも購入。今までは、普通の洋服を7枚も重ね着して雪だるまのようになって、寝る時もゴワゴワして寝心地も悪かったのだけど、今回上着は4枚で十分に温かかった。しかも寝る時はダウンを脱いで3枚だけ。それでも全く寒くはなかった。

もうひとつ寒さ対策として拘ったのは、地面からの冷気対策。実は寝ている時に一番体に堪えるのは地面からの冷気であることを皆さんご存じであろうか。空気から伝播する冷たさとは比較にならないほど体の芯に真っ直ぐに突き刺さって来るのが地面からの冷気なのである。対策として、先に述べたようにテントの設営場所の選定から始まり、今回は銀マットを3枚重ねで敷き、その上に梱包材のプチプチを敷き(これが一番効果的だと思う。しかもそのプチプチマット、色んな買い物をした時に集めた梱包材をガムテープで貼り合わせてマットサイズに仕立てた自作品)、その上にインド綿のベッドカバーを敷き、その上で寝袋2枚重ねという万全策で効果は抜群。合わせて寝心地もなかなかのもので、いつもテント泊の翌朝は腰が痛くて辛いのだけれど、今回は腰の痛みもさほどではなく快適な目覚めであった。



<< はぁ、何だか疲れて来たなぁ。今日はここまでにしておこう。読むのも大変だよね >>


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この日記は2011年01月05日mixiに掲載したものです。
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<< 昨日は、途中まででごめんなさい。続き、楽しんで貰えたなら嬉しいです >>

(後篇)
明日の分の薪の残量を考え、また体もかなり冷えて来たのでそろそろテントに入ることにした。時刻は午後9時を回っていたと思う。明日の朝、薪を拾っても使えないのだ。朝露でびっしょり濡れていて、使い物にならないのである。寝る前に最後まで焚き火を見届ける。この瞬間まで美しく、こうなった時でさえまた十分に温かい。朝露対策のため残った薪の上に拾ってきたコンパネでカバーをしてテントに入る。




テントの中では、ダウンジャケットを脱いですぐに寝袋に潜り込む。うつ伏せになり、ポテチを食べながらしばし本を読む(翌日テントの中にポテチのかけらが散乱していた。寝床でお菓子を食べるものではない)。本はロビンソン・クルーソーの下巻だ。暫くすると眠くなって来たので頭まで寝袋の中に入れ、顔出し用の穴もプル・ストリングを引いて絞り閉じる。完全にみの虫状態だ。ここまで閉ざされると、聴覚がひときわ冴えてくる。川のせせらぎを聴きながら、しばし物想いにふける。その聴覚から、視覚が覚醒するのだ。最初は暗闇の中の川が見えていた。それから寝袋の中の目線は星空へと向かい、更に宇宙を眺めていた。そして今度はその宇宙から、今自分が寝転んでいる川岸のテントが小さく見え、眠りに堕ちていった。

目が覚めた。寝袋のプル・ストリングを緩め顔を出す。顔が痛いくらいにテントの中の空気が冷たい。とても良く眠った気がした。俺は、いつも目が覚めるとその時刻をまず最初に思う。そして概ねその時刻は当たる。なのになぜか野営の時は全く当らない。今回も午前5時と思ったが、まだ1時だった。最初は眠りが浅いから感覚が狂って当らないのかと思っていたが、実はそうではないと最近思うようになった。それはこうだ。自然に包まれて眠るということは、こころも体も知らず知らずのうちに芯から癒されているため回復力が高く、そのせいで長い時間が経過しているように体が勘違いしているのではないだろうか。だから、野営の後は寝不足感がないのだ。

次に目が覚めたのは、午前3時。その次に目が覚めたのは午前6時。トイレを我慢できなくて寝袋から這い出し、テントの外に出てみた。まだ真っ暗闇だ。ただ、朝の暗闇というのは不思議と恐怖心が深夜より圧倒的に小さい。これは動物の本能なのかも知れない。夜行性の獣の活動もおだやかになり、昼間活動する獣はまだ眠りの中だから、一番安全な時間帯であることを感じているのかもしれない。もしくは、単なる思いすごしか・・・。と、そんなことを思いながら用とたしていた時、左斜め45°、距離にして15m程のところに気配を感じ振り向くと、小型犬程の大きさと思われる獣が、こっちを見ながら斜め走りして行くのが見えた。こちらのヘッドライトに獣の目だけがギランと光り、しかしその目線は真っ直ぐに俺の目を見ていた。獣の姿は暗闇でヘッドライトもいまひとつ届かずキチンと確認することが出来なかったが、キツネか野犬だと思う。そいつは草むらの中にガサガサと入り込み、低い声で唸っていた。キツネは唸らないのかな、知らないのだけれど、その付近で見かける動物の中ではその2種が該当するので、きっとそうなのだ。そんな中、用をたしている人間というものは誠に無防備で情けないものだ。流石に少し怖くなったので獣がいるであろう草むらに向かい「ハッ!ハッ!タァ!」とよく意味の判らない大声をあげ威嚇しながら用たしを続けた。というわけで朝の闇が怖くないのは本能だという俺の論理はただの勘違いであることが、あっさりキッパリと証明されてしまった。ワハハ・・・。





その後また寝袋に潜り込みうとうとしていた。6時半、テントの外が少し明るんで来た。7時、完全に朝の明るさを取り戻したためテントから出て、焚き火を起こす。冷え切った体に朝の焚き火ほど有難いものはない。これがないと、冬の野営の朝は辛い時間を過ごすだけになってしまう。しかし体を温めるのは内側からが一番だ。毎度おなじみの辛ラーメンを焚き火で作り頂く。水をペットボロルから鍋へドボッ、ドボッ、ドボッと3回注いだところで水が出なくなる。そう、注いでいるその状態でも凍りつくのだ。注がれた鍋の中の水もその場で一瞬にして凍ってしまう。そんな中ラーメンを完食し暖気は完了。






暖気は完了したがこの谷あいにまだ陽射しは届かない。体が冷えないように散歩をすることにした。川沿を上流に向かい歩くと、テントから50mほどのところに新しい熊の足跡を発見。11月末はなかった足跡なので「あぁ、やっぱいるんだぁ・・・」としみじみ。と同時に、恐怖心もふつふつと湧きあがり、やたらキョロキョロしながらの散歩になってしまった。長さにして5m程の倒木が枯れているのを見つけたので、次回の薪にしようと思いそいつを片手で1本づつ、両手で計2本、ズルズル引きずりながらサイトまで戻った。




午前8時、やっと山の上の方に陽射しがさし始める。その瞬間から気温がわずかに上昇したことが顔にあたる風で知れる。しかし、周りにあるものはまだ凍ったままだ。焚き火にあたりながら、山に当たる陽射しが目で見て判るスピートで下へ下へ降りてくる様を、ボケーッと眺めていた。午前10時、テントにやっと陽射しが舞い降りた。その瞬間から凍っていたものの全てが溶け、キラキラと輝き始める。そして、体が温かな陽射しに包まれる。








日本のひとたちは、誰もが四季の移ろいを知っている。しかしどうだろう。いちにちの移ろいを知っているひとがどれほどいるだろうか。春、夏、秋、冬、各々のいちにちの移ろいをどれほどのひとが知っているだろう。農家で働くひとたち、漁師として働くひとたち、自然に触れて生きるひとたちはこういうことを知っている。俺なんか、一年のほんの数日をこのようにして過ごしているだけで、知っているうちに入らない。ただ、そういう目線でものごとを感じられることは確かだ。「俺の野営の価値はその辺にあるのだろうな」と、朝陽で温めて貰いながらゆっくりとした時を過ごしたのでした。














さぁ、今回の極寒野営日記、お楽しみ頂けましたでしょうか。こんな一晩でしたが、何か少しだけ、皆さんの暮らしが豊かになるヒントなどを見つけて頂けたならば幸いです。こんな相変わらずのChama♪ですが、今年もよろしくお願いいたします。今日まで会社は休みなのですが、今から仕事へ行ってきまーす。

  
Posted by Chama♪ at 11:05Comments(19)